建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行
 春のにおいのするあぜ道を通って、町はずれの小学校へ友達と遊びに行った。
 入学したばかりの校庭は、石灰と防腐材のにおいがしていてそれがなんともいえず好きだった。帰り道だれ言うことなく渡った小さな鉄橋、この時の思いでが一瞬のうちに悪夢へと変った。
 耳をつんざく汽笛の音、鉄橋をころがるように夢中で走り、土手に飛び込んで草むらから見た光景はまさに地獄絵だった。後ろを走っていたはずの一つ下の男の子が、転んでしまったのだ、飛び下りることができなかったのか、重なるようにして倒れた七人の友達がアッという間に黒い機関車にのみこまれた・・・。
 長い人生にはどんなに避けようとしても、どうしても通らなければならない道がある。生きるとはなにか、人間とはなにか、幼い心に重く苦しい時が流れた。
 振り払っても忘れることができない悲痛なおもいのうちに青春が行き、年月がすぎた。
 七人の友達のいのちと引き換えに、私は生かされていると感謝する思いと、人の心の痛みがすこしは解る人間にさせてもらった・・・・・。
 人生は旅であると思う。あの時のあの場所の出会いがなかったら、出会いの尊さ、そして不思議さ、そんなこころの紀行をつれづれに書きとめてまいります。
HOPハウジングオペレーションInc.
建築家、HOPグループ代表CEO
1946年北海道芦別市生まれ。
気鋭の建築家集団、アトリエアムを率い、全国で作品を発表。
1996年林野庁と北海道の支援を受け国産木材活用システム ハウジングオペレーション(HOP)を設立、育てあげた。
1997年グッドデザイン北海道受賞。
2004年林野庁長官賞受賞(木材供給システム優良事業)。
2006年経済産業大臣賞受賞(消費者志向優良企業)。
著書に「ハウスドクター診察室」など。