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| 備前焼の壺2 |
あった。 思っていた所から百メートルも離れた草むらの中に口が大きく 潰れた 大壷がころがっていた。 何度も夢を見せた備前の大壷、涙が出るほどうれしかった。 つれていってやろう。 雨でどろどろになりながら口の中につまった土や枯草をだしてやった。 その時、壺の中に、もうひとまわり、小さい壺が、入っているのに気がついて、 腰がぬけるほどおどろいた。 壺が子供をみごもっている。口が潰れて出られないまま、何年も忘れられ、 雑草におおわれてしまったのだろう。 生きているような感情におそわれた。
岡山から宅配便で送ればいいと、気楽に考えてレンタカーを走られせた。 午後三時、札幌行に間に合うだろうか。 岡山に向かう途中、宅配便のカンバンを見つけては札幌へ送ってもらうように たのんだ。 しかし割れ物ということで、どこも引き受けてくれなかった。 梱包する時間もない。絶望感が走った。ここまで来たのに・・・。 担いで帰るしかない。 思いなおして、ビニールひもをガソリンスタンドで手に入れた。 グルグルゆわえて肩にかついだが、十歩も歩くことができないほど重い。 駅の階段は四つんばいになって、ずって上がった。 しかしだれひとり、 手を貸してくれる人はいなかった。
四時三十分、ドブネズミのように汚れた私と、大壷を、新幹線の乗客たちは 避けるようにしてとり囲んでいた。 腹がへっていて、ポケットの小銭で買えるノリ弁当を買った。 なぜか涙があふれてきて、とまらなかった。
十年前の春のころ、そのときはまだ、それからおこる、 いろいろな出会いを大壷が見せてくれることを知らないでいた。 |
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